TAMRON LENS BLOG

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   タムロンの交換レンズは、どんなところで、どのように作られているか。
   実際にその「レンズ作り」の現場 ━━ 中国の仏山タムロン工場 ━━ を見学して、タムロンレンズの品質、性能、技術開発の様子や内容をお伝えしよう、というのがこのブログの趣旨。あわせて、交換レンズがどのような手順で作られ、どんなワザが秘められているかについてもお話ししたい。
   この回では、交換レンズ一般についてのやや基本的なことだが、ぜひ皆さんに知っておいてほしいこと、私の個人的な印象が中心になるが、そのあたりから話を始めたい。

   タムロンが交換レンズを設計、製造するときに、もっとも大切にしていることが3つあるという。タムロン交換レンズ作りの「必須の基本条件」と言ってもいいだろう。

1.性能
2.品質
3.機能

   「性能」とはレンズの描写が優れていること。
   簡単に言えば良く写るレンズだ。レンズにとってもっとも重要なことでもある。高い解像力、適度なコントラスト、豊かな諧調再現性、偏りのない色調など、写真レンズとしての基本性能を備えていることである。
   いま、デジタルカメラのイメージセンサー高画素化と画像処理技術は、飛躍的な進化を続けている。そうした新時代のデジタルカメラと組み合わせて、満足できる描写力が発揮できる交換レンズが求められている。
 

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   中国のタムロン工場は広東省仏山市にある。街の中心部の古いビルの一階に広い市場を見つけた。日本ではちょっと見かけないような珍しい食材を売る小さな店がいっぱい並んでいる。その中の乾物屋さん。愛想の良いご主人に写真を撮らせてもらった。45mmの焦点距離レンズは、相手との自然な「間合い」でスナップができる。
   SP 45mm F/1.8 Di VC USD (Model F013)、絞り優先オート(F/3.5、1/50秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO800)。

 

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   仏山市の繁華街のすぐ近くに有名な観光地である祖廟がある。その中に少林寺拳法の創始者たちの記念館がある。若い人たちがたくさん見学に来ていた。この若い女性は彼に連れられて来たのだろうけど武術にはあまり興味がなさそうで、ひとりスマホをいじっていた。仏山にはブルース・リーのテーマパークもあるという。VCを内蔵したタムロンSP 85mm F/1.8 Di VC USD (Model F016) は、ポートレート用レンズというよりもスナップ用レンズとして私は日常的に愛用しているお気に入りレンズの1本。ボケの描写が柔らかくて美しい。
   SP 85mm F/1.8 Di VC USD (Model F016)、絞り優先オート(F/3.5、1/80秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO12800)。

 

   ここで少し話が横道に逸れる。
   レンズの描写性能を見極めるときに私はふたつの評価軸を基準にしている。1つは「結像性能」、もう1つは「感応性能」である。
   結像性能とは、MTF特性、解像力、コントラストなどである。いずれも数値化して客観的理論的に評価ができる。感応性能とは、ボケ味、諧調描写力、透明感などだ。個人的趣味、趣向など好みにやや左右されやすく感覚的・主観的な評価軸といえなくもない。
   しかし、感応性能こそ「レンズの味」を決める大切な要素でもあるのだ。

   最近のレンズ描写の傾向として、結像性能に重きを置きすぎて感応性能のほうは軽く扱われているようにも感じてならない。ハイコントラストな解像力重視型レンズなどはその典型ではないだろうか。
   いや私は、結像性能よりも感応性能を大切にしろ、といっているわけではない。2つの「性能」のバランスのとれたレンズこそ理想的であると考えているのだ。

   話を戻す。
   次の「品質」には、操作性、耐久性、安定性はもちろん、レンズの仕上げの良さ、外観的な美しさも含まれる。一時期、交換レンズにも「安かろう悪かろう」という時代があった。安いのだから性能、品質はがまんする。
   しかしそのようなレンズは、いまはまったく通用しない。リーズナブルな価格で優れた製品。コストパフォーマンスが良いとユーザーの誰もが満足する製品にしなければならない。そんな時代になってきている。

   とはいうものの、高い品質と優れた性能を保証しようとすると(これは仕方のないことなのだが)どうしてもコストがかかる。逆に言えば、高い部品を使い時間をかけて一つ一つ手作りするような高価なレンズであれば、品質も性能もいいに決まっている。
   けれど、可能な限り低コストで、さらにユーザーに満足してもらえる優れた性能と高い品質のレンズを作るか。そこが、いま重要なポイントであり、タムロンがレンズ開発でもっともチカラを入れているところかもしれない。

   「機能」には、AFや手ブレ補正(VC)などの機能のほか、ズームレンズであれば高倍率化、大口径化(より明るい開放F値)、小型軽量化などなど多岐にわたる。使い勝手にかかわるところで、光学性能とともに大切な部分だ。
   とくにAFやVCといった電子技術にかかわった機能は(これはタムロンが得意とする分野のひとつ)、今後のカメラボディの技術的な進化にあわせて、さらに進化していくだろう。
 

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   上の写真はSP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)の手ブレ補正(VC)ユニット。下のイラストは16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD(Model B016)の同じくVCユニットの分解図。機構的にはほぼ同じだ。タムロンはレンズ内に手ぶれ補正の機能を内蔵させることに大変にこだわっている。ユーザーベネフィットを第一に考えているからだろう。手ぶれ補正の機構をレンズ内に入れ込もうとすると光学設計の制約も出てくるし、コストアップにもなるし、レンズのサイズも大きくなってしまう。それでもタムロンは、広角であろうが望遠であろうが大口径レンズであろうが、どんなレンズにもVCを内蔵させようと努力をしている。私はタムロンのそのこだわりを高く評価している。

 

   では、実際にタムロンはこの3つの「交換レンズの必須基本条件」をどのようにして製品に結びつけているだろうか。どんなところに重点をおいてレンズ作りをしているだろうか。そのあたりをもう少し具体的に見てみたい。

   タムロンは昨年の2015年、交換レンズの新しいコンセプトを盛り込んだ「新しいSPシリーズ」をスタートさせた。このシリーズのレンズからは、タムロンの新しい時代に向けた交換レンズの「フィロソフィー(考え方)」や「こだわり(信念)」を垣間見ることができる。
   注目したいところは、おもに5つあるように思う。

① 「解像力+諧調描写力」の両立
② 手ブレ補正機構(VC)の内蔵
③ 最短撮影距離
④ 自然なボケ味
⑤ フレア/ゴーストの低減

   この5つこそが、いまのタムロン交換レンズで注目すべきことで、タムロン自身がアピールしている特長なのである。その1つ1つを理解すれば、タムロンレンズの「フィロソフィー」と「こだわり」がよくわかってくるはずだ。

   ところが、タムロンは(昔からそうなのだが)、口べた、控えめ、遠慮がち、地味…、といった傾向(社風)があるように感じることが多い。
   そんなことじゃあ、せっかくの優れた性能や苦労の技術がタムロンユーザーに充分に伝わっていかないではないか、私は常々そんな気がしていた。

   しかし、大声で自慢しない、わかってくれる人に気持ちが伝わればいい、というのがタムロンの姿勢のようだが、しかしその潔い姿勢は良しとして、もう少し積極的にタムロンレンズの「良さ」をユーザーに伝えてもいいのではないか。そのほうが、タムロンユーザーにとっても「使う愉しさ、撮る喜び」が湧いてくるに違いない。

 

 

   というわけで、せっかく「良いもの」を持っているのにひっそりしている(ように見える)タムロンに代わって、僭越ではありますが、私が上記5つの「タムロンのフィロソフィーとこだわり」について解説をさせてもらおうと考えている。それぞれ5つの項目の「意味」を理解してもらえば、いま皆さんが使っておられるタムロンレンズに感心をし、もっと愛着が出てくるはず。
   次回のブログではそのへんの具体的な話をじっくりとしたい。どうぞお愉しみに。
 

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   充分な解像力、適度なコントラスト、豊かな諧調描写力。新しいSPシリーズのレンズには、そんなレンズ特性がしっかりと備わっている。さらに加えるなら、透明感と立体感も。とても気持ちの良い写真が撮れるレンズだ。写真レンズにとってなにが大切なのかといったフィロソフィーがタムロンレンズにはある。
   SP 45mm F/1.8 Di VC USD (Model F013)、絞り優先オート(F/4、1/100秒)、プラス0.3EV露出補正、ISO100。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)
多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。
ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/

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   タムロンの交換レンズには、「MADE IN JAPAN」、「MADE IN CHINA」または「MADE IN VIETNAM」と刻印されたレンズがある。それぞれのレンズを組み立て、完成させ、出荷している国の名、生産地を示している。
   つまりタムロンのレンズは、日本、中国、ベトナムの3カ所にレンズ工場があって、そこで組み立てて製品にして出荷している。

   日本国内のタムロンのおもな工場は、青森県内に3カ所ある(埼玉県さいたま本社には金型工場が併設されている)。青森3工場はいずれも歴史のある工場だ。レンズ研磨を中心におこなっている浪岡工場、プラスチック部品の成形製造をおこなっている大鰐工場、そして交換レンズの最終組立工程のある弘前工場である。
   その中の弘前工場では、浪岡工場や大鰐工場から集められたレンズや部品を組み立てて、完成品にして出荷している。それが「MADE IN JAPAN」のレンズだ。

   いっぽう、「MADE IN CHINA」の刻印のあるレンズは、中国広東省の仏山(ふっさん)市にあるタムロン工場で製造、出荷されたものである。こちらの工場では一カ所で、レンズ研磨、プラスチック成形、AF(オートフォーカス)/VC(手ブレ補正)のユニット作り、そして交換レンズの最終組立まで一貫生産をおこなっている。
   「MADE IN VIETNAM」は、ベトナム北部の首都ハノイにあるタムロン工場で作られたレンズだ。

   ところで、やや一般的な傾向ではあるが、レンズの性能や品質が生産地、生産国だけで判断されてしまいがちだ。カメラやレンズなど精密機器の場合、とくにその傾向が強いように思う。「MADE IN JAPAN(日本製)」や「MADE IN GERMANY(ドイツ製)」というだけで、高性能で信頼できる製品であると信じている人たちも少なくない。確かに、一部のメーカーの一部の製品については、それは事実だろう。
   しかし、そのいっぽうで、たとえば「MADE IN CHINA(中国製)」というだけで、ひとくくりに一段低く見下してしまうということがある。

   それには大きな誤解があるのではないだろうか。

   こと、タムロンの交換レンズにかんしては、どの国、どの場所であろうが製造地によって品質や性能が変わることは決してない。タムロン自身が、いつも徹底して心がけていることだという。
   企画も設計もすべて埼玉県さいたま市にある本社でおこない、製品の品質管理の「総元締め」でもある。「品質も性能も、どこで生産しても同じにする。それがタムロンのやり方です」とそんな話を私は多くのタムロンの人たちから何度も聞いたことがある。

   「タムロンのすべてのレンズは、どこで作っても同じ品質の製品だという意味で、『 MADE IN TAMRON 』という気持ちを込めています」ともいう。
   タムロンという名前がつくレンズは、どこの工場で製造し組み立ててもすべて、さいたま本社が定めた品質と性能を確保するように徹底しているというのだ。
   だから『 MADE IN TAMRON 』。

   そう私も思う。いままで実際にたくさんのタムロンレンズを使ってきたが、まったくその通りだ。中国産レンズだとか日本産レンズだとか、その違いを考えたこともないし、感じたこともない。
 

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中国・仏山のタムロン工場のレンズ組み立てラインの班長、陳亜湾さん(チン・ヤワン、28歳)。陳さんは、16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO (Model B016)のイチから完成品まで一人で組み上げられる(ひとり生産ができる)ベテラン。作業中に発生した問題点は決してなおざりにしない真面目な女性社員だという。趣味は写真撮影。うしろに見える工程は、16-300mm F/3.5~6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO(Model B016)の組み立てラインの中の最終検査工程だ。

 

   ある日、タムロンの担当者とそんな話をしていたとき、「じつはそのことですが、中国のタムロン工場の人たちが、いつも悔しがっていましてね…」というのだ。中国の工場の人たちは自信と誇りを持ってレンズを作っているんですよ、とも。
   「品質と性能にこだわり、どれだけ注意を払ってレンズを作っているのか、その様子をぜひ中国に来て、工場を見て欲しい」と言っている。すべてをありのままに見せます、というのだ。「見に行きませんか、中国のタムロン工場に」と、私が誘いを受けたのが今年の初夏。

   そりゃあもちろん、私としてはぜひ見てみたい。
   どんな設備の中で、どんな人たちが、どんな手順で交換レンズを作っているのか。どのような品質管理をしているのか。そのへんにとても興味がある。
   そもそも、精密機器を作っている会社のどこもそうだが、工場の内部はあまり見せたがらない。製造過程(ライン)にはノウハウが詰まっているし機密事項も多いからだ。おそらく制限付きの見学になると思うが、それでも見てみたい。

   じつはタムロンの青森工場は、雑誌の取材などで数回、見学させてもらったことがあるが、タムロン海外工場はまだ行ったことがない(私は他メーカーの国内、海外のカメラやレンズ工場は何度か見学に行ったことはある、制限付きが多かったけど)。
 

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早朝の仏山市。街の中心部からクルマで15分ほどのところにタムロン工場がある。市内の公園では、人々が集まり音楽に合わせて「早朝のダンス体操」をしているのをよく見かける。早朝体操している広場は観光名所でもある祖廟の裏手。高いビルは街の中心にあるデパートである。28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) は、タムロンのズームレンズの中で私のいちばんのお気に入りレンズだ。フルサイズ判用の高倍率ズームではイチオシのレンズでもある。
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/250秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。

 

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仏山市の中心部に古い住宅地の一角を大幅改装してレストランや喫茶店が並ぶ"作りものの街"がある。祖廟のすぐそば。整備された街並みが続くが、そこにはほとんど人が生活していないので、早朝に歩くとまるで美しいゴーストタウンのようだ。雨上がりの清々しい朝、高倍率ズームをセットしたカメラを一台持って散歩。気持ちが良かった。
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/250秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。

 

   というわけで今年2016年の夏真っ盛りに、中国広東省の仏山にあるタムロン工場(騰龍光学)を見学することになった。むろん、ただの物見遊山で工場見学に行ったわけではない。私なりのテーマを持っていた。
   それは、「タムロンレンズの品質と性能、そして技術力」についてである。

   レンズ作りは、ごくごく簡単に言えば、企画から始まり、光学設計、鏡枠設計や電子部品の設計をして工場で生産が始まる。これらの過程では、品質のチェック、部品の精度管理、組み立て時の調整、また検査、というふうに多くの工程を経て1本のレンズに仕上がる。
   そこで、せっかく工場見学といういい機会を与えてもらったので、この際、タムロンレンズがどのように作られていくのか、順々にその道筋を「品質、性能、技術力」をテーマにしながらたどりつつ、最終的に1本の交換レンズとして完成させる工場見学のレポートをすることにした。

 

 

   工場見学の話にいたるまで少し遠回りすることになるが、途中、タムロンが考える交換レンズとはどんなものか、どんなことを大切にしてレンズを設計し生産しているのか、そんな話題にも触れていきたい。
   次回は、タムロンレンズの企画から設計、生産までの大筋をまずは俯瞰的に眺めてみることにします。この連載ブログ、次回も、ぜひお愉しみください。
 

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東京・六本木の裏道でのスナップ。私がタムロンレンズを好きな理由のひとつは、豊かな諧調描写力と上品な解像力を両立させていること。とくに新しいSPレンズはどれもいい。いま流行の"ばりばり解像感重視型レンズ"とはちょっと異なる"おとなの味"が備わっている。そのことについては、また詳しくお話しをしたい。
SP 35mm F/1.8 Di VC USD (Model F012)、絞り優先オート(F/4.5、1/60秒)、マイナス1.0EV露出補正、ISO100。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)
多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。
ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/

85mmといえばポートレートでは標準とも言われる焦点距離。
人物との距離を適度にたもつことができるからだ。
SP 85mmは開放F値F/1.8と明るく、遠近感が極端に圧縮されることなしに背景をボカした表現ができる。
これが微妙な立体感を作りだし、ポートレートでは強い武器になってくれることは間違いない。
ではポートレート専用レンズかと言えば、もちろんそんなことはない。
どんなジャンルの撮影であっても良いレンズは良いレンズなのだ。

私には85mmの焦点距離は好きな画角の一つで、昔からスナップや自然撮影の際にも持ち出している。
スナップと言えば50mm標準から広角側のレンズが使われるケースが多いが、私はあえて85mmを持ち出す。
これは誰にでも当てはまる定説とはいえないが、
私の場合、両目でどこかを注視したときの視野が85mmの画角に近く、
「あっ」と何かを見つけたときの心で見ている視野をそのままフレーミングできるのがこの85mmなのだ。
それは100mmでは長すぎ、70mmでは短い。絶妙な焦点距離なのだ。
しかもSP 85mmの手ブレ防止機構は強力で、スナップでも強い味方になってくれる。
自然撮影ではSP 90mmマクロのような本格的な接写はできないが、
被写体が小さくなければ背景を大きくボカして被写体を浮き立たせた撮影が可能だ。

ここに掲載した作例はRAWで撮影しているが、レンズ補正の機能は一切使用していない。
作品として仕上げる場合はPhotoshopやSYLKYPIXを使用し、
プロファイルを利用したレンズ収差補正機能を使うこともあるが、
SP 85mmは色収差等もきわめて良く抑えられていて素のままでも十分にきれいだ。
またここのすべてのカットが手持ち撮影だ。

 

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ショーウィンドウの中のひょっとこにピントを合わせ、ガラスに映り込んだ通行人を写し込んだもの。
通行人の写り方を気にしながらタイミングを計ってシャッターを切っている。
開放絞りでも十分なシャープネスがあり、また映り込みの挙差のあるところは適度にぼかすことができている。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/320秒 ISO:200

 

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銀座に最近できた新しい建物。その独特な風貌を見ると誰でもレンズを向けたくなるだろう。
そのときの「あれイイ!」と思ってレンズを向けた時に、そのポイントを切り撮ってくれる画角。
それが85mmという焦点距離だ。
折り重なるガラスフレームと反射、明暗の微妙な濃淡が私の目を引いたが、そのポイントだけを切りとっている。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/50秒 ISO:400

 

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スナップでの人物撮影であまり長いレンズを使うと盗み撮りのようなイメージになる事が多いが、
85mmくらいだと、適度な距離感、遠近感で被写体を浮き立たせながら撮ることができる。
実像のシャープな世界と映り込みのエッジのボケた世界が凝縮された部分だけを切り撮り、モノクロで表現してみた。
SP 85mmは階調再現も良く、人物の黒い服の深み、肌の微妙なトーン、
映り込んだ明るい部分の微妙なハイライトトーンと、モノクロにも楽しいレンズだ。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/200秒 ISO:100

 

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SP 85mmは解像感も高く、5000万画素オーバーのカメラでもシャープな像を見せてくれる。
質感をある程度見せるために絞りをF/5.6まで絞りモノクロで表現。
かなりの樹齢となり傷んだ木の幹の質感をトーンをしっかり再現しており、
またいたずらで傷つけられた部分までもシャープに描いている。
スナップ的に写しているので手持ちで1/50秒という低速なシャッター速度だが、しっかりシャープに。
手ブレ防止機構サマサマである。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/50秒 ISO:100

 

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なんでもボカせばよいというわけではないが、ボケは主題を強調してくれる便利なテクだ。
SP 85mmのボケは大きく美しい。
しかも大きくボケた部分とピントが合っている部分のつながりが良く、とてもナチュラルに描写してくれる。
とはいえボケのおかげで合焦ポイントは浮き立つ。この微妙な立体感がSP 85mmの大きな魅力の1つだ。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/100秒 ISO:100

 

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オレンジ色に近いキバナコスモスの花から花へ、これまたオレンジ色の蝶が飛び回っていた。
両方の色が似過ぎているし、離れて撮ると沢山の花が画面に入りすぎてゴチャつくため普通なら避けるところだ。
F/1.8の開放ならピントを合わせた蝶をしっかり浮き立たせてくれ、
しかも周りに沢山の色のボケを入れることもできた。
これももちろん手持ち。ピントはMFに切り替えて、最短撮影距離にセットして体を前後させて微妙なピント合わせを行っている。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO:100

 

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SP 85mmの大きな魅力の1つは大きく綺麗なボケだ。
少し飛び出した位置にある花の花心にピントを合わせ、手前と奥にボケた花を、
背景には被写体が浮き立つ暗い背景を選び、なおかつ木漏れ日が丸くボケるように配置。
こういうシンプルな構成で絵にしやすいレンズといえる。

◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO:200

 

Profile

諏訪 光二(すわ・こうじ)

1968年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科中退。各種写真教室講師。京都造形芸術大学講師。G-Technologyアンバサダー。EIZO ColorEdge グローバルアンバサダー。SAMURAI FOTO会員。

 

 

諏訪光二さんご使用のレンズについて詳しくは、
SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)製品ページ:
http://www.tamron.jp/product/lenses/f016.html

タムロン主催の「第9回タムロン鉄道風景コンテスト」の入賞作品写真展が本日から開催されました。『鉄道のまち大宮』の地域貢献として第9回目を迎え、本年は過去最高の応募総数7,098点を記録いたしました。

場所は、さいたま市のJR大宮西口駅前にある「そごう大宮店」様の3階特設会場です。みなさま、ぜひお越しください。今年は「さいたまトリエンナーレ2016」も開催中。

地図

地図

会期:本日10月12日(水)~10月31日(月)[20日間]
時間:午前10:00~午後8:00
会場:そごう大宮店 3階特設会場(埼玉県さいたま市)
入場無料

後援 さいたま市 さいたま市教育委員会 さいたま商工会議所
協力 そごう大宮店 レイル・マガジン
主催 株式会社タムロン 鉄道風景コンテスト事務局

審査結果はこちら
http://www.tamron.jp/special/contest/train2016/result.html

「さいたまトリエンナーレ2016」を応援しています。
https://saitamatriennale.jp/

開場のテープカット

TAMRON SPレンズ85mmを使って犬を撮影してみた。
TAMRON SPレンズ85mmは人物ポートレートで使っている方が多いようだが、
ペットの撮影でもその実力を大きく発揮してくれた。
まずは大型ストロボを使ってのスタジオポートレート。
1mほど離れた位置から撮影してみたが、SP 85mmは開放F値がF/1.8と小さいので、
少し距離をとって撮影しても背景を柔らかくぼかすことができる。
背景はふんわりと撮れるがピントの合った位置は非常にシャープで、
犬の細かい毛の質感を美しく表現することができた。

 

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◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:100

 

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◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:400

 

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◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100

 

そして今月はハロウィン、愛犬と一緒にハロウィン撮影を楽しむ方も多い。
こちらのハロウィンの写真は室内の電気を消して、
電球色のライトで少しだけ犬に光を当て、その場の雰囲気を生かして撮影した。
TAMRON SPレンズ85mmは開放F値が小さいので、
このような暗いシーンでも三脚を使わずに手持ちで撮影することができる。
開放F値が小さい分、シャッター速度をかせぐことができるのはとても大きなアドバンテージだ。
またこういった決めカットの撮影でなく、何気ないペットの仕草も表情でも、
背景や前景をふんわりとぼかすことで日常のシーンをすてきな絵にすることもできる。
ポートレート専用としてだけではなく、日常使いでも活躍が期待できる便利な1本だ。

 

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◎焦点距離:85mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:800

 

Profile

中村 陽子(なかむら・ようこ)

大阪市生まれ。カナダ トロント市在住中に犬と暮らし始めそのころからペットの撮影を始める。(有)ドッグファーストとスタジオD1を設立。広告を中心としてペットや子供の撮影などを手掛ける。写真教室の講師(撮り方、カメラの使い方、ペット撮影、子供撮影、テーブルフォト講座など)カメラ専門誌・愛犬雑誌でも活躍中。
風景写真やテーブルフォトの要素をペットの撮影に取り込んだ作品が特徴。

 

ホームページ
http://www.dogs1st.net/index.html

Facebook
https://www.facebook.com/yokonakamurad1/

 

中村 陽子さんご使用のレンズについて詳しくは、
SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)製品ページ:
http://www.tamron.jp/product/lenses/f016.html

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