高柳傑 アルパインクライミング in アラスカ
皆さん、はじめまして!
山岳写真家の高柳傑(たかやなぎ・すぐる)です。
まず自己紹介に代えて、私が今年5月に行ったアラスカでのアルパインクライミングのことを書いてみたいと思います。
アラスカの氷雪壁をまとった美しい山の姿を、多くの方に見ていただけたら嬉しく思います。
そもそもアルパインクライミングとはどのようなものでしょう。
あまり聞いたことのないジャンルだと思いますので、簡単に解説しておきたいと思います。
この登山方法は、山岳地域においてロープやアイスアックス(ピッケル)などを用いて岩壁や氷雪壁を登り、
山頂を目指す登山のスタイルです。
現在はボルダリングやフリークライミングといった、手足のみで登るクライミングをやる方も増えていて、
街中のいたるところにクライミングジムがあったりもします。
これらはスポーツ的側面が強く、自己の限界に挑戦し動きやすいように、
安全を確保するための必要最小限の装備で行うクライミングです。
それに比べ、アルパインクライミングは冒険的側面が強く、
山頂を目指して過酷な状況でも生き延びて登山を続けられるように、
睡眠や食事などに必要な装備を背負いながら行うクライミングのことをいいます。
同じクライミングでも装備や環境が大きく違い、スポーツと冒険という対極の位置にあるものの、
限界に挑戦するという行為に変わりはないでしょう。
言葉だけではなかなか分かりにくいと思うので、
以下、私が今年の5月に行ったアラスカ・デナリ国立公園でのクライミングの写真から、
その雰囲気をつかんでいただければと思います。
アラスカの短い夜が明け、肌に触れる空気がまだ私達に温かみを与えてくれない時間帯。
次第に周りが太陽に照らされ、心なしか気温の上昇を感じはじめました。
5月といえば日本ではもう春の陽気ですが、
ここアラスカ・デナリ国立公園カヒルトナ氷河では標高も高く2400m前後なので、まだまだ零下の気温。
登っている時は体がフル稼働しているので温かいのですが、
下でパートナーを確保するためにぶら下がっている時は結構寒いです。
登りはじめは体が温まってよいのですが、次第に手足の筋肉に乳酸が溜まり疲労していくのがキツイです。
ただ新しい景色を楽しめる最高に楽しいひと時です。
(焦点距離16mm・絞りF9・1/250秒・ISO100)
振り上げている手は次第に暖かい血を冷やし手の感覚を麻痺させてきます。
そして今度はその手を下ろした瞬間に暖かい血が一気に戻り、逃がれることのできない痛みがやってくるのです。
しかしその見返りとして高度は増し、周囲の眺めをさらに良くしてくれます。
このカットはクライミング中のもので、パートナーとロープでお互いを確保しつつ登っている状況。
先を行くパートナーが登っているのは氷壁で、アイゼンとアックスを駆使して登ります。
途中に安全のため、アイススクリューというギアを氷に突き刺しながら登ります。
(焦点距離78mm・絞りF9・1/400秒・ISO100)
ハンター北壁の夕焼けです。
5月ではまだ白夜にはならず、夜11時頃にはこのように日が落ち始め、3時間ほど辺りは闇に沈みます。
この瞬間が一番寒い時間帯で、同時にもっとも美しい時間でもあります。
今回はこの岩壁もトライする予定でしたが、コンディション不良で残念ながら果たせませんでした。
また次回挑戦したいと思っています。
(焦点距離62mm・絞りF18・1/2秒・ISO100)
まさに“河”と呼ぶにふさわしい、氷河のスケールです。(空撮)
日本国内ではなかなか見ることのできない氷河。
ここアラスカでは無数の氷河が走り風景の良いアクセントになっています。
デナリ国立公園は今回で三度目になりますが、訪れるたびに目を奪われてしまいます。
(焦点距離86mm・絞りF9・1/500秒・ISO100)
ハンター北壁をバックにカヒルトナ氷河上にあるベースキャンプを撮影。
正確にいうとカヒルトナ氷河のランディングポイントです。
ここはMt.デナリ(マッキンリー)の登頂を目指す登山者の多くが、セスナで最初に到着する場所。
Mt.デナリに比べれば少数ながら、Mt.ハンターやMt.フォーレイカーなど、他の山を目指す登山者もここに到着します。
こんな大自然の環境ですが、ここだけは人の往来がかなりあり、
まるで国際空港のように毎日多くの登山者を乗せた飛行機(小型のセスナ)が離着陸します。
ちなみにパラソルがさしてあるあたりは、デナリ国立公園のレンジャーのテント。
シーズン中はここで登山者たちの往来をチェックしたり救助をしたり、
セスナの滑走路を整備したりしてくれている大変ありがたい存在です。
もちろん滑走路といっても氷河なので、コンクリートではなく平らにした雪ですが…。
(焦点距離22mm・絞りF9・1/400秒・ISO100)
今回、タムロンのレンズSP AF10-24mm F/3.5-4.5 DiⅡLD(Model B001)と、
16-300mm F/3.5-6.3 DiⅡVC PZD(Model B016)の2本をベースキャンプに持ち込みました。
B001はクライミング時以外での撮影でおもに使用。
ベースキャンプ周辺では広角での撮影も多かっただけにかなり活躍してくれました。
フレアやゴーストの影響が気になることもなく、安心して使用できたのもありがたいことでした。
B016は、今回のメインレンズ。
クライミング時は衣食住すべてを持って登らなければなりません。
できるだけ軽量で、しかもどんな状況にも一本で対応できるこのレンズはまさにベストチョイスでした。
焦点距離のレンジが広いのでレンズ交換が不要で、手ブレ補正も付いているので、
クライミング時の非常に不安定な体勢でもブレを気にせず撮影できました。
また、多少氷にぶつかってもびくともしない信頼性も特筆に値すると思います。
高柳 傑(たかやなぎ・すぐる) 1988年生まれ。学生時代より登山、クライミング、写真を始める。日本写真芸術専門学校卒業。写真家・青野恭典氏に師事。フリークライミング、アルパインクライミング、アイスクライミング等、さまざまなジャンルの登山を行う。今年度後半、海外遠征の予定。神奈川県横浜市在住。
高柳 傑さんご使用のレンズについて詳しくは、
SP AF10-24mm:http://www.tamron.co.jp/lineup/b001/index.html
16-300mm:http://www.tamron.co.jp/lineup/b016/index.html
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