TAMRON LENS BLOG

飛行機そのものにレンズを向ければ、望遠レンズが欲しくなるのがわかるだろう。それも400mmを超える超望遠レンズに。
先代の150-600mm(Model A011)から進化したこのA022は、AF応答速度、手ブレ補正のVC機構、操作性、そして描写力など、全般に渡る性能向上が謳われている。
A011から続く携行の良さは屋外での望遠撮影に大きく寄与し、何より手軽にそのレンズを付けたカメラを持ち出そうとするフットワークの軽さを手に入れられることが、最大の魅力だ。それに輪をかけて性能向上となれば、写真を撮ろうと外へ出ようとする気持ちは俄然高まる。
また今回のモデルチェンジとともに新しくテレコンバーターがラインナップに加わり、さらに望遠効果を求める場合に威力を発揮できることとなった。

天候、陽の状況、そして風の向き。飛行機の写真を撮る上で、常に影響を受ける環境に対して臨機応変に行動するには、自身はもちろん、撮影機材などを取り回し良くできるかが重要になる。
時にA022を付けたカメラ一台で飛行場の周りを歩いて一周、または飛行場から遥か離れて遠景に見える飛行機を狙うことも念頭に入れた機材選びが鍵となるのだ。
今回はこのA022を付けたフルサイズカメラ、APS-Cカメラ、1.4×テレコンバーター、2×テレコンバーターと4通りの写真を選んでみた。

このブログでは、その撮影状況を簡単に記するが詳細は2月23日、24日、CP+のタムロンブースにてお伝えする予定です!

では、皆さんのご来場を心よりお待ちしています!

 

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春の便りを待つ羽田空港に、大陸からの長旅を終えようとする777型機が滑り込んでいく。

◎SP 150-600mm(A022)+APS-Cサイズカメラ、換算825mm相当
絞り:F/11 シャッタースピード:1/1250秒  ISO100

 

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乾いた北風の吹く1月上旬。日の出を背景に羽田空港を駆け上がる767型機を約6Km離れて眺望する。

◎SP 150-600mm(A022)+2倍テレコンバーター+APS-Cサイズカメラ、換算1800mm相当
絞り:F/22 シャッタースピード:1/1250秒 ISO100

 

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夏雲の湧出る9月初旬。東京湾へ向け羽田空港を駆け上がる777型機を展望エリアから見上げた。

◎SP 150-600mm(A022)+フルサイズカメラ、375mm相当
絞り:F/10 シャッタースピード:1/400秒  ISO100

 

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西より風が吹いた1月中旬。積雲溜まる東京湾を横断しファイナルアプローチへ入った737型機。

◎SP 150-600mm(A022)+APS-Cサイズカメラ、換算900mm相当
絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/1000秒  ISO100

 

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羽田空港22滑走路へ進入中の777型機。運河の水面に反射する太陽光が機体下面に映し出された。

◎SP 150-600mm(A022)+フルサイズカメラ、600mm相当
絞り:F/9  シャッタースピード:1/1000秒  ISO100

 

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首都圏上空30000フィートを西へ。旅の途中、大陸間を横断する飛行機が頭上を越えていった。

◎SP 150-600mm(A022)+2倍テレコンバーター+APS-Cサイズカメラ、換算1800mm相当
絞り:F/13 シャッタースピード:1/80秒  ISO400

 

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日の入り20分前。羽田空港へ着陸進入する777型機。約20Km離れた対岸からレンズを向けた。

◎SP 150-600mm(A022)+2倍テレコンバーター+APS-Cサイズカメラ、換算1800mm相当
絞り:F/18 シャッタースピード:1/320秒  ISO100

 

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福岡空港34滑走路へ737型機のベースターン。雪雲の隙間からまもなく沈む陽を背に受けた。

◎SP 150-600mm(A022)+2倍テレコンバーター+APS-Cサイズカメラ、換算1800mm相当
絞り:F/13 シャッタースピード:1/500秒  ISO100

 

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寒風吹きすさむ夜の8時ごろ。大阪空港32L滑走路へ進入する787型機を千里川土手で待ち受けた。

◎SP 150-600mm(A022)+フルサイズカメラ、150mm相当
絞り:F/5 シャッタースピード:1/40 秒 ISO25600

 

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福岡空港16滑走路から駆け上がる777型機。前哨灯がみぞれ交じりの冬雨を照らした。

◎SP 150-600mm(A022)+APS-Cサイズカメラ、換算900mm相当
絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/50秒  ISO4000

 

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十五夜の月が輝く冬夜。羽田空港から離陸上昇する787型機が通過する。

◎SP 150-600mm(A022)+2倍テレコンバーター+APS-Cサイズカメラ、換算1800mm相当
絞り:F/13 シャッタースピード:1/640秒  ISO2000

 

inoue井上六郎(いのうえ ろくろう)

1971年東京生まれ。スタジオマン、個人写真家アシスタントを経て、出版社の社員カメラマンとして自転車、モーターサイクルシーンなどを撮影する。その後は出版社を退社しフリーランスに。
以後、国内外の自転車、モーターサイクルメーカーやスポーツアパレルメーカーの広告や各一般雑誌、専門誌等で撮影活動中。
また、国内外のマラソンなどスポーツイベントの公式記録カメラマンを務める。
自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、
航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。
日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

 

井上六郎さんご使用のレンズについて詳しくは、
SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2(Model A022)製品ページ:
http://www.tamron.jp/product/lenses/a022.html

 

井上六郎さんがご登場の、CP+2017タムロンステージスケジュールはこちら
タムロンCP+2017特設サイト:
http://www.tamron.co.jp/special/cpplus2017/

桜と言えば春の代表的な花ですが、冬の寒空にピンク色のきれいな桜が咲いていました。花も大振りでピンク色も濃く花付きもいいようです。なんという名前かしらと思って樹名板を見てみると“ヒマラヤザクラ”とありました。50年くらい前にネパールの皇太子より贈られた桜だそうです。花芯も長くアップにして撮るのも面白いと思いマクロで狙ってみました。背景の色は赤く色づいた紅葉の葉っぱです。秋色を背景に、ピントは大振りのシベに合わせ絞り過ぎず開け過ぎずとF/8で撮りました。三脚は使えなかったので、手ブレ補正機能を活用して風に揺れる被写体を捉えるために何度かシャッターを切りました。新しい手ブレ補正機能は大いに役立ってくれました。

冬のさくら

冬のさくら

◎焦点距離90mm 絞り優先AE F/8.0 シャッタースピード1/400秒 ISO400 +1.0EV補正

 

冬になると鮮やかな葉っぱや花が減って、樹々は枯れて葉っぱは落ちます。そうすると枯れて残った葉っぱが目立つようになって面白い被写体になります。日の当たった枯れた葉っぱの表面に手前の小枝の影が黒く映っています。これは光がなければ存在しない、光が作り出したアート作品を撮らせてもらったものです。周囲の色も枯草色のシックな茶色でまとめることができました。カメラと葉っぱがなるべく平行になる位置を探して、絞りはあまり絞らずに撮りました。枯れた葉っぱが光で輝いて渋い革のような質感です。このような質感が描写できるのもマクロレンズならではだと思います。

影模様

影模様

◎焦点距離90mm 絞り優先AE F/4.2 シャッタースピード1/1250秒 ISO800 +0.3EV補正

 

なんという葉っぱかわかりませんが、枯れて小枝に引っかかってぶら下がっていました。風に吹かれてゆらゆらと揺れていましたが、オートフォーカスで右側の葉っぱにピントを合わせて撮りました。オートフォーカスも素早くピシッと合い気持ちいいですね。主役が地味な色合いなだけに背景にくる色は意識して、緑の葉っぱや赤い花の色をぼかしてアクセントに利用しています。枝に引っかかる小枝の位置を三分割上に配置して葉っぱの右側の空間が空くようにフレーミングし、柔らかい背景から葉っぱが浮かび上がるように撮りました。ピントの合ったところはシャープで、それでいてとろけるようなボケの美しさは明るい開放値のマクロレンズならではですね。

風に吹かれて

風に吹かれて

◎焦点距離90mm 絞り優先AE F/3.5 シャッタースピード1/250秒 ISO800 +0.3EV補正

 

冬ならではの被写体の一つにイルミネーションがあります。暗くて撮るのが難しいイメージがありますが、光そのものは明るいので露出オーバーにならないようにアンダー目に撮ればライトの色もきれいに撮れます。イルミネーションは光の玉ボケがファンタジーに表現できますから、玉ボケができる位置を探して撮りました。前景に玉ボケになるツリーの光を大きく入れて中景のツリーの光がそれよりは小さく、一番奥にピントを合わせた主役の女神のイルミネーションを重ねて玉ボケの光をまとうようにフレーミングしました。玉ボケをやわらかくしたかったので絞りは開放で。

光の女神

光の女神

◎焦点距離90mm 絞り優先AE F/2.8 シャッタースピード1/30秒 ISO100 -0.7EV補正

 

イルミネーションは色々なフィルターを使うことで面白い効果が得られます。これはソフト効果とクロスの光条効果のあるクロスフィルターを使っています。光条の方向はフィルター枠を回すことで好きな位置に変えられます。丘の上を歩く人物のシルエットを、斜面に広がる緑色の光と赤い背景のイルミネーションで挟んでソフトクロスを効かすことで非現実的な、夢のような雰囲気になりました。二人連れの人物が来るまで待ってちょうどいい位置でレリーズしています。90㎜のマクロレンズは開放絞りの明るい単焦点レンズとしても活躍するので、暗い場面でもピント合わせやフレーミングのしやすさは抜群です。

夢の中

夢の中

◎焦点距離90mm 絞り優先AE F/6.3 シャッタースピード1/13秒 ISO1600 -1.0EV補正

 

普段、花や植物を撮る私にとって、冬というのはちょっと変わった被写体が撮れる面白い季節なのです。普通に考えれば花や緑もないし、何を撮ればいいの?っていうことですが、冬になれば樹々の葉っぱが落ちて樹形や枝が目立ってきます。また生い茂っていた緑がなくなり背景がシンプルになってきます。フォトジェニックな乾燥して枯れた葉っぱや質感の面白い被写体がそこかしこにあって、上手く背景と組めばそれこそアートな作品に仕上がります。花だって実や種になって面白い被写体です。主役の色合いは渋くて地味目ですが、背景に光や明るい色をもってくれば十分美しい作品になります。小さな被写体が豊富な冬の時期はマクロで寄って撮るのが面白いのです。また冬の風物詩、イルミネーションも最近では色々なところで開催されて身近な被写体になりました。マクロレンズの明るい開放値と柔らかなボケを活かしてファンタジーな表現が可能です。外は寒いですけど冬ならではの被写体を見つけにでかけましょう。北風に負けないように!

 

okamoto岡本洋子(おかもと・ようこ)

東邦大学生物科を卒業。12年間の会社勤務の後、日本写真芸術専門学校にて写真を学ぶ。卒業後は秋山庄太郎氏のアシスタントを務め、独立フリーへ。現在、花や植物、風景を主に撮影。各種撮影会や写真教室講師を務める。

女子美術大学非常勤講師
日本写真協会会員(PSJ)
日本自然科学写真協会会員(SSP)
フェイスブック https://www.facebook.com/yoko.okmoto.5

 

岡本洋子さんご使用のレンズについて詳しくは、
SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)製品ページ:
http://www.tamron.jp/product/lenses/f017.html

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   仏山タムロン工場の見学をきっかけにして、このブログではいくつかのテーマを持ってタムロンの交換レンズに私が感じていること、考えていることを9回にわたって述べてきた。今回はその最終回。

   タムロンは日本国内(青森工場)のほか海外(中国工場やヴェトナム工場)でも交換レンズを生産している。しかしそこで生産される交換レンズの「品質と性能」については、タムロンが定めた基準を厳格に守っている。つまり、生産される地域によって品質も性能も変わることはない、ということ。だからタムロンは、生産されるすべてのレンズが『Made in TAMRON』なのだと言っている。

   安定した品質で優れた性能を備える"良いレンズ"をタムロンが作っていること、さらには、もっと良いレンズを作ろうと努力していることは、このブログを読んでもらってなんとなくわかっていただけたと思う。
   しかし ━━ と、きっと多くの皆さんはおっしゃるだろう ━━ 良いレンズとは、具体的にどんな条件を満たしていればいいのか、タムロンはどんなところに重点をおいてレンズを設計し、開発し、製造しているのか。以下は、たぶんに私の個人的評価軸に偏っている部分もあるだろうが、タムロンが考える「理想のレンズ」と当たらずとも遠からずだと思う。
 

≪ 良いレンズであるための必須条件(私のレンズ評価軸)≫

① 適度なコントラスト(立体感、透明感)
② 上品なシャープネス(解像力、鮮鋭感)
③ 豊かなグラデーション(諧調描写力)
④ 滲みのない正しい色再現性(色のニュートラリティー、色のクリアーさ)
⑤ 優れた逆光特性(フレア/ゴーストが目立たない)
⑥ 正確な対称性(ディストーション/ディフォルメーションが少ない)
⑦ なだらかなボケ味(柔らかさ、色のクリアーさ)
⑧ 操作性(機能、大きさ重さ、ズームリング/ピントリングの感触)
⑨ 耐久性(壊れにくい、防塵、防滴)
⑩ 価格(リーズナブル、コストパフォーマンス)
 

   上に示した10の条件は私が普段、レンズを評価するときの基本条件である。それぞれに優劣、多少のデコボコがあってもいいが、欠けることは許されない。理想を言えば、10のすべての条件が均等に、バランス良く満たされていることだ。
   たとえば、シャープネス(解像力)が大変に優れているが、強いコントラスト傾向があるために諧調描写力は少し犠牲になっているレンズ。一見したところ、力強くて見栄えの良い写りのレンズのようだが、いささか個性が強すぎる。これを私は「自己主張し過ぎるレンズ」としてあまり高く評価をしない。

   では、タムロンの交換レンズはどうだろうか。
   上記の10の条件は過不足なく満たしているのだが、はっきり言って、やや地味な印象のレンズが多い。いいや、控えめで、謙虚な印象のレンズと言い直した方がいいか。
   いまのレンズ描写の流行のように、オレはどうだ、オレは凄いだろう、と自己を主張しないレンズのような気がする。レンズのほんとうの性能をわかってくれる人に使って欲しい、というタムロンの姿勢が、私は好きだし、良いことだと考えている。
   なぜか。その理由はデジタルカメラの特性を考えてみればわかる。
 

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   一部のレンズに見られるハイコントラストで太い解像描写力の画像は、見る人に力強い印象を与え「わっ、凄い描写だ」と驚かせることはできる。しかしタムロンレンズはそれとは逆。タムロンのレンズ描写の特長は、適度なコントラストと豊かな諧調描写力、そして細くて上品な解像力、立体感のあるボケ味だ。じんわりと時間をかけて良さが伝わってくる描写のような気がする。とくに、新しいSPシリーズの単焦点レンズは使っていると、そうしたタムロンレンズの特性を顕著に感じる。
   SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)、絞り優先オート(F/1.8、1/3200秒)、ISO100

 

   デジタルカメラの画質は、いま飛躍的に向上してきている。イメージセンサーの高画素化や大型化、そして画像処理技術の進歩によるところが大きい。そんな現在の最新のデジタルカメラと組み合わせても、カメラ側の絵づくりの方向性を大切にしつつ、レンズの描写性能を充分に発揮することが求められている。

   レンズの個性が強すぎると、カメラ側の絵づくりの狙いがめちゃくちゃになってしまう恐れもある。レンズの自己主張が強すぎると、少しニュートラルに戻そうとしても無理のある画像処理をしなければならない。レンズの描写特性がニュートラルで柔軟性があるほど、カメラ側で絵づくりをコントロールしやすくなる。
   やや控えめで素材を大切にした描写だと、適度にコントラストやシャープネスを加減することで画質を損なうことなく画像を仕上げることができる。それがタムロンの「レンズ描写のフィロソフィー」ではなかろうか。

   考えてもみてほしい。タムロンの交換レンズは特定のメーカーのデジタルカメラにだけ相性が良いように作っているわけではない。絵づくりの考え方の異なるカメラメーカーのデジタルカメラと組み合わせても、自己主張せず、しかしレンズの描写性能は最大限に発揮されるように、じつに細やかな配慮がされている。
   タムロンのように汎用交換レンズを作っているレンズメーカーにとっては、ここが重要なのではないだろうか。たとえばフィルムカメラを使っていて、あるフィルムとの相性は良いが、別のフィルムを使うと期待したような写りにならない、カラーならいいがモノクロだとさっぱり、というような交換レンズは困る。それと似てはいないか。
 

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   たとえばの話だが、タムロンのまったく同じレンズを異なるメーカーのカメラボディと組み合わせて撮影してみると、いっぽうのカメラでは色収差がほとんど見られないのに、かたほうのカメラでは色収差が目立つということもある。カメラが自動的にデジタル処理をして一括に色収差を補正しているか、していないかの違いである。タムロンとしてはカメラ側の画像処理補正に頼ることなく、これからも正面から堂々とレンズ光学性能だけで勝負していって欲しいと思う。
   16-300mm F3/.5~6.3 Di II VC PZD MACRO (Model B016)、絞り優先オート(F8、1/250秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO3200。

 

   デジタルカメラと交換レンズをセットで作っているカメラメーカーでは、レンズの描写特性(クセや欠点)に応じてカメラの絵づくりを最適化するということもできる。歪曲収差や色収差などが簡単に補正できるのもそうした技術の恩恵によるものだ。
   しかし、それは自社の交換レンズに対してであって、他社(タムロンなど汎用レンズメーカー)の交換レンズは画像処理による自動収差補正の恩恵を受けることは、一般的にはできない。丁寧に真正面から、愚直に描写性能の良いレンズを作っていくしかない。そして、どのようなカメラボディと組み合わせても水準以上の画質が得られることは当然だが、さらにはボディとレンズとの重量バランスや操作にも違和感を与えないようにしなければならない。

   こうしたことはタムロンのような汎用レンズメーカーの宿命でもある。だからこそ、自己主張の強い頑固な交換レンズよりも、タムロンの交換レンズのように(やや地味ではあるが)描写の基本はしっかりと確保したうえで柔軟な交換レンズのほうが良いと私は考えている。

   「コンピューテーショナルフォトグラフィ」という言葉をご存じだろうか。
   コンピューターを使って作り出す新しい写真のことだ。最新のデジタルカメラの中にはコンピューターが内蔵されているようなものだ。新しい写真画像を創り出すだけでなく、イメージセンサー、画像処理技術、そしてレンズを一体に考え、それぞれの不足ぶんを互いにおぎないあいながら理想的な画像に仕上げる写真技術は、もうそこに来ている。
   将来、カメラ内蔵の高性能コンピューターを使ってレンズの収差補正をすることなど容易にできるようになるだろう(実際、いまもやっている)。未来的には、ピントの補正、ボケ味のコントロールなども簡単にできるようになる可能性だってある。

   だが、どんなにコンピューテーショナルフォトグラフィが進化したとしても、レンズの基本的な役割は変わることはないだろう。レンズには、光を忠実に、余計な手を加えることなくカメラに手渡すという基本原理がある。
   デジタルカメラが今後どれだけ電子化が進むか予想もつかないが、しかし写真レンズだけは、製造方法も役目もおそら今とあまり変わらないだろう。レンズを丁寧に磨き、それを正確に枠に嵌め込み、精密に動作させ、どこからの援助も手助けもなく自立して優れた描写性能を発揮する。そんなレンズこそが生き残って行き大切にされるに違いない。

   そう、いまのタムロンの交換レンズの「描写のフィロソフィー(第3回ブログを参照)」こそ、現在のデジタルカメラにとってももちろん、将来のデジタルカメラにとっても、いちばん重要なところをしっかりと見据えて設計され製造されているように思う。

 

 

   長いブログの連載をお読みいただき、ありがとうございました。
   「寡黙」なタムロンに替わって私がくどくどと説明をしてしまったために、すっかり長い連載になってしまいました。
   でも、このブログをお読みいただいてタムロンレンズの「良さ」が、皆さんに少しでもご理解していただければ私としては望外のよろこびです。
 

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   2~3日にかけ仏山タムロン工場などを見学させてもらって、本日は仏山を離れる日となった。その日の朝、カメラ一台を持ってホテルの近所を散歩してみた。蒸暑い朝で湿度が高い。エアコンの効いたホテルから一歩外に出るとレンズ表面がすぐ曇ってしまう。偶然、通りかかった小さな公園でご夫婦だろか、老人ふたりが音楽にあわせて軽やかにダンスをしているのを見かけた。見とれてしまうほどウマい。一曲終わるのを待って、おふたりの写真を撮らせてもらった。「ありがとうございました」と礼を言って別れ際、ふと振り向くと素晴らしい笑顔で見送ってくれていた。その笑顔を読者の皆さんにもお裾分けを。
   28-300mm F8/3.5~6.3 Di VC PZD(Model A010)、絞り優先オート(F/5.6、1/50秒)、マイナス0.7EV露出補正、ISO100。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/

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   仏山タムロン工場を見学しながらいろんな話を聞いて、驚いたことがひとつあった。工場の生産ラインを管理する数十人の中国人管理職の人たちのほとんどが、日本語でコミュニケーションがとれるということだった。中国のタムロン工場の人たちが、それだけ努力をしているということではないか。
   日本のタムロンの社員とダイレクトに話ができることのメリットはいくつもある。
   たとえば、青森工場の技術者や本社の設計者たちと、通訳を介さずにテレビ会議をおこなって情報共有ができる。ほんの小さな問題も、なおざりにせず連絡を密に取り合って解決にあたることもできる。

   日本人の技術者たちが仏山タムロン工場にやってくるのは、新製品の立ち上げ時に5~6名、短期の出張に来るぐらいで、量産が軌道に乗ればさっさと帰国してしまう。それは青森の工場と本社との関係ともまったく同じで、中国の工場だからと"特別扱い"されているわけではない。
   仏山タムロン工場の製造ラインを管理する日本人は、多いときで2~3人が長期出張しているという状況。工場で働く人たちはほとんどが現地の中国人の人たち。それほどに仏山タムロン工場は「自立」してきているといえる。

   第7回めのブログで、仏山タムロン工場のことについてはすでに紹介した。そこで少しお話ししたが、工場で働く従業員数は約3000人で、平均年齢は26.3歳と若い。ざっと、女性が70%、男性は30%の比率。

   実際に仏山タムロン工場で働いているのは、どのような人たちなのだろうか。どんな人たちがタムロンの交換レンズを作っているのだろうか。私だけでなく皆さんも、きっとご興味があるだろうと思った。そこで社員紹介。
   ただし数多くの従業員の方々を紹介することはとてもできないので、そのうちの10人ほどのかたに「代表」になってもらい、担当の職場で写真を撮らせていただき、お話しも少しうかがった。
   以下、ご紹介をしたい。
 

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伍冬梅(ウ・トンメ)さん。レンズ研磨工程を担当。

勤続14年になる31歳のベテラン。研磨機械のセッティング、調整の責任者でもある。ほとんどの研磨機械に精通しているという"職人さん"だ。研磨された製品の品質管理も任されている。後方に見えるのはレンズ磨きの最終作業である「研磨工程」の機械。ここでガラスレンズは美しい透明状態に仕上げられる。
 

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顔嬌(ヤン・ジャオ)さん。レンズ研磨工程を担当。

入社からまだ半年の新人。19歳と若いがとても勉強熱心で、向上心もあるという。将来が愉しみ。広東省北部の韶関市の出身。後に並ぶのは「精研削(スムージング)工程」のための機械。工場に納入されたガラス材は、まず荒摺され、次に精研削して、そして研磨工程で磨き上げられて写真レンズとなる。
 

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黄冬華(ファン・トンファ)さん。レンズ芯取り工程担当。

勤続11年めになる35歳のベテラン。芯取りとはレンズの周辺を削って中心光軸を正確に出すレンズにとって重要な加工。コーティング前の取り扱いに神経を使うレンズや、コーティングを済ませたレンズなどを扱う。黄さんは、芯取工程の班長。芯取機械の技術管理や制御ソフトの調整などをおこなう。後に見えるのは芯取りの機械。
 

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写真左、

梁偉業(リョウ・ウェイェ)さん。金属加工担当。

31歳で勤続年数は8年。金属の切削加工をおこなうNC旋盤を使った工程の現場管理者。
梁さんは、専門技術学校卒業後に、他の企業でNC旋盤関係の仕事を約2年ほどやったあと、仏山タムロン工場に入社。班長として若い人たちを指導している。

写真右、

区暁文(オウ・ショウェン)さん。金属加工担当。

勤続6年めになる28歳。機械専門の短大を卒業した後、金属技術者として仏山タムロン工場に入社した。NC加工工程の係長で、新型機種を立ち上げるときに機械のセッティングの最終責任の資格も持つ。
 

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劉炳輝(リュウ・ビンフェ)さん。プラスチック成形製造担当。

勤続年数が18年になるベテラン。40歳。仏山タムロン工場が稼働し始めたころからの社員だ。現在、部長代理の管理職にある。後方に並ぶ成形機械に金型をセットして、樹脂パレットを材料にして精密なレンズ鏡筒を生産する。劉さんには製品の品質には強いこだわりがあって、0.003mm以内の精度でプラスチック部品を生産できるように努力をおこたらないという。「いろいろな技術を習得したのも、会社の上司や同僚のおかげです。感謝しています」とのこと。
 

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黄志鵬(ファン・ジペン)さん。レンズコーティング工程担当。

勤続13年めになる40歳。コーティング工程のベテラン。係長職である。おもに技術管理などをおこなっている。特殊コーティングの機械の操作技能も持っている。黄さんの横にあるのが「傘」とよばれるもので、そこにレンズが並べられる。レンズが並んだ傘を後方に見えるコーティング釜に入れて、真空状態にした後にコーティング材をレンズ面に極薄に蒸着させる。
 

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孔惠珍(コン・フゥイチェン)さん。交換レンズ組み立て工程担当。

勤続年数6年めになる23歳。若いが行動力があって、いまは班長になっている。孔さんが手にしているのは、SPAF17~50mmF/2.8 XR Di II VC LD Asphericral [IF](B005)で、後方はそのB005の組み立てライン。組み立てラインの班長ともなれば、他のレンズの管理もできるし1人でレンズを組み上げることもできる技倆を持つ。
 

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謝土英(シェ・トゥイン)さん。レンズ組み立てラインで検査担当。

勤続年数は6年。性格の柔和な23歳で、指示されたことに真面目に取り組み即応する能力を持つと評判の女性。いま、おこなっている作業はSPAF17~50mmF/2.8 XR Di II VC LD Asphericral [IF](B005)のVC作動検査である。VCユニットはパーツとして部組みする工程でも慎重に検査されるが、さらにレンズに組み込んだ後に実際にカメラボディにセットして所定の条件を満たすかどうか何度もチェックをする。
 

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従業員紹介の番外編。
写真右は、

本社(大宮)取締役でもある張勝海(チャン・シェンハイ)さん。56歳。

海外生産担当役員で、中国・仏山工場の董事長でもある。大東文化大学の修士課程を卒業後タムロンに途中入社以降、19年のあいだずっと中国工場業務担当。仏山タムロン工場の立ち上げにかかわったあと現職。上海市出身でご家族を残して単身赴任。大声で早口の上海なまりの日本語を話す。

写真左は、

仏山タムロン工場の董事兼総経理の張凱(チャン・カイ)さん。50歳。

八代高専を経て長岡技術科学大学を卒業後、1993年にタムロンに入社。勤続23年。最初は機構設計の技術者として大宮本社で仕事を続け、中国工場が完成と同時に仏山に出向となった。北京市出身。ご家族と仏山市内に暮らす。「董事(くんじ)」とは中国の会社での役職名で、日本で言えば取締役に相当する。その取締役会の会長が董事長。「総経理」は社長にあたる。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

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   設立20年になる仏山タムロン工場は、マザー工場である青森3工場とほぼ"肩を並べるほど"に成長している。そのことは前回のブログでもお話しした。
   ただし、一部の重要パーツや処理(たとえば金型、非球面GMレンズやナノ構造のレンズコーティング)についてはマザー工場に頼っているところもあるが、金型を使っての樹脂成形、精密金属切削加工、レンズ研磨、電子部品の部組み、そして交換レンズの本組みは仏山タムロン工場でおこない、ダイレクトに世界中に製品を出荷している。

   交換レンズの組み立て(部組み、本組み)は、製品の仕上がり品質に直結する大切な工程である。ところが、指定されたとおりに部品を組み付け、固定しただけではタムロンが目標とする製品に仕上げることはできない。プラモデルを組み立てているのとはわけが違う。
   部組みとはサブ工程ともよばれ、比較的小さなパーツ類をあらかじめユニットに組み上げておくこと。本組みとはレンズ組み立てのメイン工程のことで、部組みしたユニットを指定通りに組み合わせて完成品にする工程である。

   ここがレンズ組み立てのキーポイントでもあるのだが、レンズ組み立て(本組み)の途中では、何度もチェック(検査)を繰り返し、必要なら調整をし直し、ときには、いったん組み上げたレンズ群を外して丁寧に調整してからふたたび組み付けるということもやる。高い品質、優れた性能を求めるなら決しておろそかにできない作業がたくさんある。

   まず、下のチャート図をご覧いただきたい。交換レンズの組み立て工程とその流れを大まかに示したものだ。
 

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   大別すると作業工程には、サブ工程(部組み)、メイン工程(本組み)、そして出荷工程の3つがある。チャート図に記載はないが、サブ工程のところではそれぞれ部品組み立てのときには必ず調整や検査をおこなっている。

 

   「サブ工程(部組み)」では、研磨を終えた光学レンズを「レンズ群」として組み付けたり、小さな電子部品を組み合わせてAFユニットやVCユニットなどに仕上げたり、絞り機構を組み付けてユニットにしたり、交換レンズを構成する機構部品づくりをする。
   あらかじめ作り上げられたいくつかの必要部品を集めて、ようやく交換レンズに仕上げる本組みをする。ここからが交換レンズづくりのメイン工程となる。

   ここでメイン工程での組み立ての順番を、簡単に説明しておきたい。
   多くの交換レンズはつぎのような手順で組み上がっていく。私が仏山タムロン工場に見学に行ったときに、メイン工程で組み上げていた「16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD MACRO(Model B016)」と、「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)」の2本のズームレンズを例にした。ざっと流し読みしていただければいい。

   ①各レンズ群の組み付け(レンズの基本となる外鏡枠の中に各群をはめ込み仮固定する)
   ②絞り機構を組み付け(レンズ群とセット)
   ③VCユニットを組み付け(レンズ群とセット)
   ④フレキシブル基板を取付け
   ⑤ズームリング/ピントリングの組み付け
   ⑥ピエゾドライブ(PZD)または超音波モーター(USD)ユニットの組み付け
   ⑦メイン基板(円形基板)を後部に取付け
   ⑧レンズ鏡筒最後部を取付け
   ⑨AFやCVの切り替えスイッチを組み付け
   ⑩マウントを取付け
 

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   16-300mm F/3.5~6.3 Di II VC PZD(Model B016)の組み立てライン。マウントが取り付けられたレンズは、写真手前側の検査工程に向かっていく。

 

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   16-300mm (Model B016)ズームのレンズ群の組み付け。棚の上にレンズ部品を作業台に移して、画面右にあるビス類を使って組み付ける。上からぶら下がっているのは締め付けトルクが設定できる電動式ドライバー。

 

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   レンズ後部に円形のメイン基板を取り付けて、フレキシブル基板を接続する。この後に、後部鏡筒をセットしてからレンズマウントを固定する。16-300mm (Model B016)。

 

   以上の①から⑩までが交換レンズ(ズームレンズ)の組み立てで、これで"いちおう"交換レンズとしてのカタチが整う。しかし、ここからがメイン組み立て工程の本番、本命ともいえる検査と調整の工程が控えている。
   この検査と調整こそが高品質のレンズを作り上げるための、もっとも重要な工程である。どの検査も調整も、大変にデリケートで精密。専用の調整機器(タムロンもそうだが各メーカーとも自前で開発して使っているものが多い)を使用して検査や調整をする工程がたくさんある。以下、大まかな検査、調整工程。

   ①フランジバック(FB)の調整 ━━ 正確な無限遠にピントが合わせられるようにFB(マウント面からセンサー面までの距離)を調整する
   ②光軸調整 ━━ 調芯(ちょうしん)ともよばれる大変に重要な調整工程、組み付けた各レンズ群の芯が正しく1本の光軸に合致しているか検査、もし傾いて芯がずれていれば片ぼけの原因ともなり、必ず正確に合わせ直す
   ③MTF検査/調整 ━━ 一般的には専用のMTF検査器でチェックして、調整幅が書き込まれたメモを見ながらレンズ群を外したり、ワッシャを加えたりして調整する、ここも重要な工程
   ④VC調整、AF調整 ━━ 手ブレ補正(VC)とAFが所定の基準通りに作動するか検査する、必要なら微調整をおこなう
   ⑤カメラ検査 ━━ 対応のカメラボディにレンズをセットして基本操作をおこなって不具合がないかチェックする
   ━━ この後、ズームリングのラバーや化粧リングを取り付けるなど「外装」を整える。
   ⑥フォーカス/ズームトルク検査 ━━ MFでのフォーカス(ピント)リングの操作感、ズーミングして回転トルクやゴリゴリ感などがないか慎重にチェック、感覚的な検査なので経験豊富なベテランがおこなう
   ⑦内観・外観検査 ━━ 最終検査である、レンズ内のゴミのチェックから外観まで徹底的に目視検査をする
   ━━ 以上の検査と調整を終えてほぼ完成品となる。その後、シリアルナンバーの刻印、レンズキャップやレンズフードなどをセットして梱包作業に移る
 

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   コリメータとよばれる専用機器を使ってFB(フランジバック)を検査をする工程。調整が必要なレンズは、その調整量を専用伝票に書き込んでレンズと一緒に調整工程に移す。16-300mm (Model B016)。

 

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   組み上がり調整が済んだレンズはカメラボディに取り付けてさまざまな動作をおこなう。これは動作中の異音チェックをしているところ。他の音で邪魔されないようにビニールで囲った中で作動チェックしている。16-300mm (Model B016)。

 

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   SP24-70mm (A007)の最終検査。フォーカシングやズーミングを繰り返して感触やトルク感を確認している。1本1本のレンズは、検査や調整をおこなったときの数値がメモされた伝票が必ず一緒に移動する。この伝票を見れば、誰が、どこで、どんな作業をおこなったのかすぐにわかる。レンズの履歴書だ。

 

   メイン工程での交換レンズの組み立てと検査、調整の解説をしたが、実はこれ以上に細かな検査や調整の工程が含まれている。ひとつの作業ごとに(組み立て工程も検査工程も)エアーダスターを使って丁寧にゴミやほこりを取り除いて、次の行程に移すようにしている。むろん、組み立て、検査をする作業場はクリーンルームになっている。
   私は仏山タムロン工場でのそんな作業を眺めていて、「ソコまでやるのか」と感心させられたことが何度もあった。

   こうした組み立て、検査の工程は、国内の青森工場(弘前工場)でも同じようにおこなわれていて、その方法やシステムをそっくり仏山のタムロン工場でもやっているという。タムロンというブランド名の付いたレンズを(それがどこで作られようが)責任をもってユーザーに届ける、そのための徹底した品質管理と性能確保なのだ。
   だからこそ「タムロンのレンズはどこで作っても同じ品質、同じ性能の製品」になるわけだ。

   次回のブログでは、仏山タムロン工場でレンズ製造にかかわっている人たちの人物紹介などをしながらレンズ作りの様子を見直してみようと思う。どうぞお愉しみに。

 

 

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   ちょっと信じてもらえないかもしれないが、長年、たくさんの交換レンズを使って、撮影して、撮った写真を見ていると、実際に撮影しなくてもレンズを操作してみただけで、写りのだいたいの良し悪しぐらいはわかる。ここでおべんちゃらをいうつもりはないが、タムロンの新しいSPシリーズの単焦点レンズは、手にしてカメラボディにセットしてファインダーを覗いただけで、「おおっこれは良い写りをしそうなレンズだぞ」と感じさせるなにかがある。写してみれば、実際にその通りに良く写るのだ。
   SP35mm F/1.8 Di VC USD Model F012)、絞り優先オート(F/5.6、1/60秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

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