ドラマ『良いこと悪いこと』は、回を重ねるごとに“真犯人は誰なのか”という謎が深まり、視聴者の考察が一気に加熱している作品です。
22年前の出来事をめぐって散りばめられたヒントは、単純な犯人探しでは読み解けない複雑さを帯びています。
黒く塗りつぶされた集合写真、忘れ去られた子ども、消えた大人たち──どの要素も点と点がまだつながりきっていません。
この記事では、これまでに判明している情報や考察を整理しつつ、真犯人として浮かび上がる可能性の高い人物や背景に踏み込み、作品が描こうとしているテーマについても触れながら読み解いていきます。
“一人の黒幕” では語れない複雑な構造
『良いこと悪いこと』の事件は、単独犯による計画的な犯罪として捉えるには、あまりにも多くの齟齬が生じる。
表向きは、連続して発生する不可解な死や失踪、それらを繋ぐ子ども時代の集合写真やタイムカプセルという象徴的なアイテムがあるものの、ひとつひとつの出来事の裏側には、それぞれ異なる動機と背景が潜んでいるように見える。
作品全体の空気感からも、“単純に誰か一人が黒幕”という構図を視聴者に提示していない。
このドラマが描く核心部分には、いじめ、秘密の共有、無自覚な加害、そして大人たちの誤った判断が複雑に絡み合っている。
子どもたち自身も当時の記憶を曖昧にしており、その曖昧さが結果として偽りの“安全”を保つ盾になってしまった。
彼らが忘れた誰かの存在や、消された記憶が、22年後の現在に歪んだ形で返ってきているようにも感じられる。
つまり、物語の事件の根幹には、個人の悪意ではなく、複数の人間が抱え込んだ罪や沈黙によって生まれた“構造的な影”が横たわっている。
この部分を理解しないまま犯人探しをしても、物語の深さは掴めない。
森智也という人物の“軸の揺れ”
物語の中で重要な立場に置かれているのが、当時クラスを受け持っていた森智也です。
彼はタイムカプセルの管理を行い、“夢のアルバム”と呼ばれる象徴的アイテムにも深く関わっているため、自然と疑惑の中心に置かれる存在だと言えます。
しかし、森の行動や感情の描写を追うと、彼を単なる悪役に位置づけるのは不自然に感じられます。
彼は過去の出来事に対し、強い後悔と自責の念を抱えている様子があります。
さらに、事件に関わる重要な物を故意に破棄したり、証拠隠滅につながる動きをしていない点も特徴的です。
森は、何かを隠してはいます。
しかしその裏にあるのは“守りたい何か”や“贖罪したい何か”であり、冷徹な黒幕が持つような不動の悪意とは異なります。
森智也は、事件の“中心にいるが、中心点ではない”存在です。
彼は渦の真ん中に立ちながら、その渦を作り出した本人ではない可能性が高いのです。
“忘れられた子ども”が握る最大の謎
“もうひとりのドの子”と呼ばれる存在は、物語最大の鍵を握ると考えられています。
集合写真の中で黒く塗られた子どもたち。
その中の一人は、名前も記憶も曖昧なまま扱われています。
この“記憶の欠落”は偶然ではなく、当時の子どもたちが無意識に、あるいは意図的に忘れようとした結果である可能性が高いです。
いじめを受けた子どもを、他の子どもたちが共同で“見なかったことにした”のだとしたら、その事実こそが現在の事件の起点となっていても不思議ではありません。
被害者と加害者の境界線は曖昧で、幼い彼らが抱えていた恐怖や後ろめたさは、大人になった今でも彼らを縛り続けています。
“忘れられた子ども”が生きているのか、
その関係者が動いているのか、
あるいは誰かの代わりに誰かが罪を背負っているのか。
どのパターンでも、22年前の小さなコミュニティで生まれた歪みが現在の事件に直結する構造は変わりません。
同級生たちが抱えている“沈黙の理由”
トヨ、小山隆弘(ターボー)、土屋ゆき(ゆっきー)たち同級生は、大人になった今もどこか腫れ物に触るように過去を語ります。
その態度は、単なる“忘れてしまった昔の出来事”という軽さとは明らかに違います。彼らは何かを知っています。
しかし、それを言葉にする勇気を持てないまま、22年という年月が過ぎてしまいました。
彼らが抱えている沈黙は、単なる怠慢でもなければ、故意の隠蔽とも言い切れません。
むしろ幼い頃の自分たちが加担していたかもしれない出来事に向き合えず、大人になってようやく後悔が押し寄せてきている、そんな不器用な罪悪感が透けて見えます。
ただ、誰かが沈黙しているという事実は、事件における“共犯性”を含み得ます。
全員が少しずつ何かを隠し、少しずつ見ないふりをした結果、歯車が狂っていったという可能性は非常に高いと言えます。
大人たちは何を知り、何を隠していたのか
子どもたち以上に不可解なのは、当時の教師や学校関係者の動きです。
一部の大人は、タイムカプセルの内容やアルバムの管理、事件の処理に関わり、ある情報を外部に出さないようにしていた気配があります。
ただ、現在彼らは亡くなっていたり行方不明になっていたりして、証言が得られません。
この“大人たちの不自然な欠落”こそが、物語の大きな違和感を生み出しています。
意図的に伏せられた事実がどこかに存在している、そんな息苦しい空気が物語全体に漂っています。
大人たちが守りたかったのは、子どもたちの未来だったのか、
自分たちの保身だったのか、
あるいはもっと別の“存在”だったのか。
答えはまだ見えませんが、彼らの行動は確実に事件の土台を作っています。
まとめ
『良いこと悪いこと』の“真犯人”を一人に特定するのは現時点では難しいものの、物語全体から見えてくるのは、個々の人物よりも、過去のいじめや沈黙が積み重なって生まれた“構造的な闇”が事件を形作っているという点です。
子ども時代の忘却や、大人たちによる不自然な隠蔽、記憶の空白──それらすべてが22年後の現在に連鎖しています。
今後の展開によって真相がどのように描かれるのかは読めませんが、犯人探しを超えた深いテーマが提示されているのは確かです。
最終回に向けて、一つずつ明らかになる真実に注目していきたいと思います。
