2024年に公開された映画「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」について、「これは本当にあった話なのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
結論から言えば、この映画は2003年に福岡市で実際に起きた「福岡市教師いじめ事件」を土台にした実話ベースの作品です。
ただし、完全なドキュメンタリーではなく、ノンフィクション本を原作とした「事件をもとにしたフィクション」という位置づけになっています。
この記事では、映画がどこまで実話なのか、元となった事件の概要、そして製作側のスタンスについて詳しく解説します。
映画の原作となったノンフィクション本
映画「でっちあげ」の原作は、福田ますみ氏が執筆した『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』というノンフィクション・ルポルタージュです。
この本は、実際に起きた事件を綿密に取材し、その真相に迫った作品として知られています。
福田氏は事件の関係者への取材を重ね、マスコミ報道だけでは見えてこない事実関係を明らかにしました。
映画はこの原作本を下敷きにしながらも、登場人物の名前や細部の出来事については変更を加えています。
これは実在の人物のプライバシーへの配慮や、映画としてのドラマ性を高めるための演出的な判断によるものです。
元になった実在の事件とは
映画の土台となったのは、2003年に福岡市で発生した「福岡市教師いじめ事件」です。
この事件は、日本で初めて「教師による児童への体罰」が「いじめ」として公式に認定されたケースとして、社会的に大きな注目を集めました。
当時、ある小学校教師が児童に対して暴力的ないじめを行ったとして告発され、マスコミは連日この事件を報道しました。
教師は「殺人教師」とまで呼ばれ、激しいバッシングにさらされることになります。
しかし、事件の真相を取材したルポルタージュでは、告発内容の信憑性や事実関係について疑問が投げかけられました。
体罰の有無、その程度、保護者の主張とのズレなど、報道だけでは見えてこなかった複雑な構図が明らかになっていったのです。
この事件は、教育現場における体罰問題、マスコミ報道のあり方、冤罪の可能性など、現代社会が抱える様々な問題を浮き彫りにしました。
映画における実話の扱い方
映画「でっちあげ」は、実在の事件をベースにしながらも、あくまで「フィクション作品」として製作されています。
事件の構図やテーマ、つまり体罰告発の経緯、マスコミ報道の過熱、冤罪性の有無といった本質的な要素は実話に基づいています。
一方で、登場人物の名前、具体的なエピソード、会話の内容などは映画的な演出として再構成されています。
これは、事実を忠実に再現するドキュメンタリーとは異なり、事件が持つ社会的なテーマをドラマとして描くことに重点を置いているためです。
公式サイトや宣伝においても「実話をもとにした」「実在の事件をベースにした」という表現が使われており、完全な創作ではないことが明示されています。
監督・三池崇史のスタンス
この映画を手がけた三池崇史監督は、「事実」と「映画」の間には越えがたい線があると明言しています。
監督は、安易に「実話そのもの」と言い切ることは避けており、「事実を題材にした映画作品」というスタンスを一貫して取っています。
これは、映画という表現手段が持つ限界と可能性を理解した上での誠実な態度と言えるでしょう。
実際の事件には多くの関係者がおり、それぞれに異なる視点や記憶があります。
映画はそのすべてを完全に再現することはできませんが、事件が問いかける本質的なテーマを観客に届けることはできます。
三池監督は、事実関係の細部にこだわるよりも、事件が社会に投げかけた問題の重要性を描くことに注力したのです。
まとめ
映画「でっちあげ」は、2003年の福岡市教師いじめ事件という実在の出来事を土台にした実話ベースの作品です。
ノンフィクション本を原作としながらも、完全なドキュメンタリーではなく「事件をもとにしたフィクション」として製作されています。
体罰告発、マスコミ報道、冤罪の可能性といった事件の本質的なテーマは実話に基づいていますが、登場人物名や細部は映画的に再構成されています。
この作品は、教育現場の問題や報道のあり方について、私たちに深く考えさせる重要な映画と言えるでしょう。
