「年収の壁」を意識して、シフトを調整したり年末に働き控えをした経験がある方は多いのではないでしょうか。
そんな中、所得税の非課税ラインが大きく見直され、「年収178万円の壁」が注目を集めています。これまで103万円や160万円を気にしていたパート・アルバイトの方にとって、働き方の選択肢が広がる可能性のある改正です。
本記事では、年収178万円まで働けるようになることで、手取りがどの程度増えるのか、どんな人が恩恵を受けやすいのかを分かりやすく解説します。
働き損を防ぐために知っておきたい注意点もあわせて確認していきましょう。
年収178万円の壁で何が変わる?パート・アルバイトの働き方への影響
今回検討されている税制改正は、パートやアルバイトとして働く人の働き方に大きな変化をもたらす可能性があります。
これまで多くの人が意識してきた「103万円の壁」は、年末が近づくたびにシフトを減らしたり、働く時間を調整したりする原因になっていました。
ところが、2026年度からは所得税がかからない年収の基準が178万円まで引き上げられる方向で話が進んでおり、こうした制限を気にせず働ける環境が整いつつあります。
この背景には、長年据え置かれてきた控除額を、物価上昇や最低賃金の変化に合わせて見直すという狙いがあります。
さらに、一定期間は家計支援として上乗せ措置が検討されている点も注目されています。
これが実現すれば、「税金が増えるのが不安でシフトを断る」といった場面は減り、収入を増やしたい人にとって選択肢が広がるでしょう。
一方で、住民税は別の基準で課税されるため、完全に税負担がなくなるわけではありません。
しかし、多くの人にとっては負担が軽くなり、家計にも働き方にも前向きな影響を与える改正になると考えられます。
178万円の壁で実際いくら得する?手取り増加額を具体的にチェック
年収の壁が178万円まで引き上げられると聞いて、多くの人が真っ先に気になるのは「結局、年間でどれくらい手取りが増えるのか」という点ではないでしょうか。
各種試算を総合すると、年収が178万円前後のパート・アルバイトの場合、所得税の負担がほぼなくなることで、年間およそ2万〜3万円ほど手元に残るお金が増えると見込まれています。
たとえば、これまで年収170万円程度で働いていた人は、年間で1万円台半ばほど差し引かれていた所得税が、改正後はほぼゼロになる可能性があります。
この金額は、外食を少し贅沢にしたり、家電や日用品の購入費に回したりと、日常生活では意外とありがたい存在ですよね。
さらに、パート層だけでなく、年収500万円クラスでは約2万円台後半、600万円前後では3万円台後半の減税効果が期待できるという見方もあります。
これは控除額が拡大されることで、税金がかかる所得そのものが小さくなる仕組みが関係しています。
年収130万円程度ではもともと税負担は軽めですが、160万円前後なら課税がゼロに近づき、178万円付近まで働く人ほど「確実に得をする」ケースが増えるでしょう。
ただし、月単位で見ると数千円の変化にとどまるため、過度な期待は禁物です。
加えて、社会保険料は別ルールで決まる点には注意が必要で、手取り増加の全てが自由に使えるわけではないことも理解しておきたいところです。
178万円の壁で後悔しないために知っておきたいパート勤務の考え方
所得税の非課税ラインが178万円まで引き上げられるとはいえ、実は注意すべきポイントがあります。
それが「社会保険の壁」は従来どおり残るという点です。
「税金がかからないなら、もっと働いても大丈夫」とシフトを増やした結果、思った以上に手取りが減ってしまうケースも考えられます。
たとえば106万円のラインは、従業員数が51人以上の事業所で週20時間以上働く場合に影響し、この基準を超えると社会保険への加入が必要になります。
その結果、給与のおよそ2割前後が保険料として差し引かれることになるのです。
さらに130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、自分で健康保険や年金を負担する立場に変わります。
実際、年収が130万円を少し超えただけで、保険料負担が一気に増え、手取りが大幅に下がる「逆転現象」が起こる可能性もあります。
場合によっては、年間で20万〜30万円近い負担増になることもあり、これは家計にとってかなり大きな影響ですよね。
仮に178万円まで働いたとしても、社会保険料で25万円ほど引かれれば、手元に残る増加分はごくわずかになり、「働いたのに得をしていない」と感じる状況になりかねません。
だからこそ大切なのは、自分の目的に合った働き方を選ぶことです。
今の生活費を重視し、扶養内で効率よく働きたいなら、年収を130万円未満に抑えるのが無難な選択でしょう。
一方で、将来の年金額を増やしたい、病気やケガの際の保障を手厚くしたいと考えるなら、あえて社会保険に加入し、178万円近くまで働くという選択も長期的には安心につながります。
まずは職場の担当者に、保険加入の条件やシフト調整の目安を確認し、年末に慌てないよう月ごとの収入管理を意識することが重要です。
今回の制度改正は追い風ではありますが、社会保険との兼ね合いを理解することが「損をしない鍵」になりそうですね。
まとめ
年収178万円の壁が導入されれば、所得税の負担が軽くなり、パートやアルバイトの手取りが年間で数万円増えるケースが見込まれます。
特にこれまで税金を理由にシフトを調整していた方にとっては、働いた分だけ収入につながりやすくなる点が大きなメリットです。
ただし、社会保険の加入条件は別に存在するため、年収が106万円や130万円を超える場合は注意が必要です。
目先の手取りだけでなく、将来の保障やライフスタイルを踏まえた働き方を考えることが重要と言えるでしょう。
