有人による宇宙探査が本格的に始まりますね。
NASAが提案しているアルテミス計画では、2025年以降に人類を月面に送り、そこでの持続的な活動が考えられています。
また、JAXAでも月面で活躍できる人材を募集していますね。
このような有人の宇宙探査で欠かせないのが宇宙服です。
しかしネットをみてみると、今の技術では宇宙服が作れないという話があるようです。
有人の宇宙探査が計画されるなか、宇宙服が作れないというのは嘘ではないのでしょうか?
そこで、今回は「宇宙服が作れないは嘘?作り方はおばあちゃんの手縫いや値段についても!」についてまとめてみました。
宇宙服が作れないは嘘?
ここでは宇宙服が作れないというのは嘘なのかについてお伝えしていきます!
結論からいうと、現代の技術レベルで宇宙服を作ることはできます。
現に、JAXAをはじめ、世界各国の宇宙開発期間で宇宙服の開発や製造が行われています。
見た目に美しい宇宙服の実現を目指して
引用元:JAXAウェブサイト
しかし、現在、宇宙ステーションの船外活動で使われている宇宙服は、約40年前に作られたもののようです。
そして、その宇宙服は、いまでは作ることができないようですね。
実は宇宙服を新しく生産できない問題があったことをご存知でしょうか?
宇宙服は多層の生地を複雑に重ねて作られているため、機械で縫うことができずすべて手縫いで作られています。
ところがこの縫製技術が継承されていないため、現在宇宙服は新しく生産することができず40年以上も同じものを使い続けているのです。
現時点で宇宙服は11着しか残っていないため、場合によっては宇宙服が不足することがあるかもしれません。
これから有人の宇宙探査が本格的にはじまるというのに、これは大問題だと思います。
そこで、今回はどうしてこのようなことになったのか、宇宙服について詳しくご案内していきます。
宇宙服の作り方は?
宇宙空間は、とても過酷です。
たとえば温度ひとつとっても、太陽光があたるところは100℃以上だったり、当たらないところは-100℃以下だったりします。
また、宇宙空間には空気がないので、宇宙服の中に空気を閉じ込めて漏れないようにしなくてはいけません。
宇宙服の内気圧や温度を調整したり、呼吸用の酸素を供給したりする生命維持装置も必要です。
その他にも、宇宙線やスペースデブリなどから宇宙飛行士を守るために、宇宙服はとても複雑で精密な作りになっています。
そのような宇宙服は、冷却下着層、気密拘束層、断熱保護層の3層構造になっています。
まず、一番身体に近いところには水冷のホースが通っている冷却下着層があり、宇宙飛行士の体が熱くならないようにしています。
冷却下着の上は空気を蓄えるための気密拘束層、そして表面は熱やスペースデブリから宇宙飛行士を保護するための断熱保護層になっています。
この断熱保護層は、多層断熱材というとても薄くてヒラヒラとした素材を7から12枚ほど重ねて作ります。
そして、その縫製の仕方で、断熱保護層の性能は大きく変わってくるのです。
宇宙服の性能は宇宙飛行士の生命に関わってきますから、とても大切ですね。
ですので、宇宙服の縫製には高い技術が求められるのです。
おばさんの手縫いで宇宙服は作られている?
宇宙服の表面にある断熱保護層は、多層断熱材という素材を重ね合わせて作ります。
この素材はとても薄くてヒラヒラしているため、機械で縫製することができません。
要は、ミシンのような機械を使うと、ぐちゃぐちゃになってしまうのです。
縫い方が悪く素材にゆがみがあったり一部に力が入ったりすると、そこから熱や空気が逃げてしまいますね。
それでは、宇宙飛行士の安全を確保することができなくなります。
そこで、40年前の宇宙服は、熟練のおばさんが手縫いで作ったのだそうです。
アメリカの宇宙服は、職人のおばさんが全部手縫いで縫っているのは有名な話ですね。
宇宙服は多層なので、機械ではうまく縫えないんです。
先程申し上げた断熱材のMLIは、とても薄くひらひらした素材で、それが7~8層になっています。
それに防護層も重なるので、機械で縫うとぐちゃぐちゃになってしまうんですよ。
引用元:JAXAウェブサイト
最先端技術の結晶である宇宙服が、おばさんの手縫いというのもびっくりですね。
裏を返せば、それだけ宇宙服を作るのは難しいということなのでしょう。
そして、宇宙服が作られたあと、おばさんの手縫いの技術は伝承されなかったそうです。
宇宙服は、長期にわたって大量生産されるものではないので、おばさんの縫製技術を引き継ぐ人が育たなかったのかもしれませんね。
縫製などの職人による熟練の技は、図面や仕様書では伝えきることができません。
つまり、宇宙服はロストテクノロジーのひとつであり、宇宙服が作れないという噂の根源になっているようです。
宇宙服の値段は?
ちなみに、宇宙服の値段も調べてみました。
ファンファンJAXAというJAXAが運営するコミュニティサイトの情報よると、日本円で1着10億5千万円するようですね。
スペースシャトル用に米国が開発した船外活動用宇宙服(Extravehicular Mobility Unit: EMU)は、宇宙服アセンブリが100万ドル(約1億円)、生命維持装置が900万ドル(約9億5千万円)で合わせて1,000万ドル(約10億5千万円)します。
引用元:ファンファンJAXA
内訳は、宇宙服本体が1億円、そして生命維持システムが9億5千万円とのことです。
また、船外活動用の宇宙服は、宇宙飛行士の体格に合わせてパーツを交換します。
グローブも宇宙飛行士ごとに用意され、その価格は1セット220万円です。
ギネス記録を保持している世界一高い服は12億円のウェディングドレスとのことですが、それに次ぐ高価な服ですね。
ただ、宇宙服は小さな宇宙船とまで言われています。
宇宙船だと思えば、10億円も妥当な値段なのかもしれないですね。
新しい宇宙服は作れないの?
縫製技術が伝承されなかったので、いまは40年前に作った宇宙服を作ることができません。
それでは、もう新しい宇宙服は作ることができないのでしょうか?
ネットで調べてみると、新しい宇宙服の記事をみつけました。
記事によれば、2022年9月に、民間の宇宙インフラ開発会社である「アクシオム・スペース」が、新しい月面探査用の宇宙服を提供すると発表したそうです。
2022年9月には、有人月面探査ミッション「アルテミスⅢ」(2025年の予定)で使用する月面探査用の宇宙服を、宇宙インフラ開発会社「アクシオム・スペース」が提供すると発表。
この新しい宇宙服は、従来の宇宙服と比べて非常に柔軟性があるようですね。
また、端広くクルーの体形に対応できることも特長で、この宇宙服で初の女性による月面着陸が計画されているようです。
40年前の縫製技術は途絶えはしまいましたが、宇宙服は着実に進歩を続けているようですね。
まとめ
過酷な宇宙環境から宇宙飛行士を守る宇宙服は、高度な技術や素材で作られています。
特に、表面の断熱保護層は、薄くてヒラヒラした素材を重ね合わせるため、機械で縫製することができません。
40年前の宇宙服は、熟練のおばさんがひとつひとつ手縫いをして作りました。
しかし、その縫製技術が伝承されなかったので、現代はかつての宇宙服を作ることができません。
そのようにして作られた宇宙服は、1着10億5千万円します。
しかし、かつての宇宙服は作れなくても、各国の宇宙機関はよりよい宇宙服の開発を進めています。
より動きやすくて快適で安全性の高い宇宙服が開発されれば、有人宇宙探査はもっと盛んになることでしょう。
早く、高性能な宇宙服が開発されて、誰でも月や火星に旅行ができるようになるといいですね。