「UMB」2度優勝、「フリースタイルダンジョン」ラスボスなど、伝説的ラッパーとして名を刻んだ晋平太。
そんな彼が2019年、「アドレナリン2019ファイナル」で突然の引退を宣言しました。
ファンの間には衝撃が走り、「もうステージで彼を見ることはないのか」と惜しむ声が広がります。
しかしそのわずか3か月後、晋平太はまさかの復帰。しかも復帰戦の舞台は「戦極MC BATTLE」――。
この記事では、引退から復帰に至る理由と、その間に起きた出来事を時系列でわかりやすく解説します。
伝説のラッパー・晋平太、突然の引退発表
日本のフリースタイル界で知らぬ者はいない存在――それが晋平太（しんぺいた）です。
「UMB（ULTIMATE MC BATTLE）」で2度の優勝を果たし、「フリースタイルダンジョン」ではラスボスとして登場するなど、長年ヒップホップ界の最前線を走り続けてきました。
そんな彼が2019年10月、「アドレナリン2019ファイナル」のステージで、ファンの前に立ち「これで終わりにします」と突然の引退宣言をしたのです。
しかも対戦相手はR-指定。ヒップホップシーンを代表する2人のスペシャルマッチ後の出来事だっただけに、会場中が衝撃に包まれました。
引退の裏にあった3つの理由
表向きは突然のように見えた引退。しかしそこには、晋平太なりの深い理由がありました。
まず1つ目は「バトルへの情熱が薄れてしまった」こと。
長年トップとして戦い続けた彼は、全力を出し切ったという達成感とともに、少し“燃え尽きた”感覚を抱いていたといいます。
2つ目は「若手へのバトンタッチ」。
MCバトルのレベルが年々上がる中で、「次の世代にステージを譲る時期だ」と感じたそうです。
自分が立ち続けるよりも、未来を担う若者たちを輝かせたい――そんな思いがあったのでしょう。
そして3つ目は「教える側への転身」。
晋平太は引退後、「1億総ラッパー化計画」というプロジェクトを立ち上げ、YouTubeやワークショップなどでラップを広める活動を始めました。
子ども向け講座や初心者向けの解説動画などを通じて、ラップを“特別な才能”ではなく“誰でも楽しめる文化”へと広げていったのです。
引退は終わりではなく、新たな始まり
ステージを降りた晋平太でしたが、その行動は決して“終わり”ではありませんでした。
むしろ、バトルという枠を超えてヒップホップを育てる「新たな挑戦」のスタートだったのです。
ファンの中には「彼のいないバトルは物足りない」と感じた人も多かったでしょう。
しかし晋平太は、ラッパーとしての情熱を別の形に変え、文化そのものを次の時代へとつなぐ道を選びました。
引退という言葉の裏にあったのは、“去る勇気”と“育てる覚悟”。
それこそが、晋平太が本物のレジェンドと呼ばれる理由なのかもしれません。
引退からわずか3か月、まさかの電撃復帰
「もうバトルでは見られないのか…」
そんな寂しさが漂っていた矢先、晋平太は驚くほど早くステージに戻ってきました。
まるで“最終回で消えたキャラクターが、続編でサラッと登場する”ような衝撃。
引退からたったの3か月後――ファンは歓喜と驚きの中で、その姿を再び目にすることになります。
なぜ彼は、あれほど潔く去った舞台に戻ったのか？
その理由には、人間味あふれる想いとヒップホップへの深い愛情が隠されていました。
原点回帰──「やっぱりラップが好きだった」
最も大きな理由は、純粋に「ラップが好き」という気持ち。
引退後、彼はYouTubeでラップ講座を開き、外からシーンを見つめていました。
しかし、画面越しにバトルを見るたびに、
「自分ならこう返す」「あの瞬間、ステージに立ちたい」――そんな衝動が蘇ってきたのです。
長年積み重ねてきた情熱は、簡単に消えるものではありません。
一度離れたことで、むしろラップへの愛情が再燃。
まるで別れた恋人の大切さに気づき、「やっぱり君しかいない」と戻るような感覚だったのでしょう。
シーンの声に背中を押されて
復帰を後押ししたのは、ラップシーンそのもの。
イベント主催者やファンたちから「もう一度ステージに立ってほしい」という声が絶えませんでした。
唯一無二の韻のセンス、そして“言葉で人を動かす力”。
晋平太にしか作れない空気感を、誰もが恋しく思っていたのです。
迎えてくれる場所がある――それはアーティストにとって何よりの励まし。
彼はその声に応えるように、再びマイクを握る決意を固めました。
戦いから表現へ──価値観の変化
引退前、彼にとってMCバトルは“勝負の場”でした。
しかし、復帰後の晋平太は明らかに変わっていました。
「誰かを倒すため」ではなく、「自分の想いを伝えるため」に戦う――
バトルを“表現の舞台”として再定義したのです。
この変化は、まるで星を狙う料理人が「お客さんの笑顔」を目指すようなもの。
勝ち負けを超えて、言葉の力で人の心を動かすことこそ、彼の新しい目的になっていました。
本人も「引退は終わりではなく、区切りだった」と語っています。
つまり、あの引退はリセットではなく、再出発のための“助走期間”だったのです。
真のスタートラインへ──第二章の晋平太
晋平太の復帰は、単なる“戻る”ではありません。
自分の中でラップの意味を再確認し、覚悟をもって再出発した“新章の幕開け”。
彼のステージには、引退前にはなかった深みと優しさ、そして確固たる信念が宿っていました。
そう、これはただのカムバックではなく、“本当の晋平太”が始まる瞬間だったのです。
次の章では、その復帰戦――ファンの記憶に刻まれた“伝説の一戦”を振り返っていきましょう。
晋平太、電撃カムバックの始まり──戦極復帰バトルの全記録
引退を経て、再びマイクを握る決意を固めた晋平太。
その第一歩となったのが、2020年1月4日に開催された「戦極東海獏丸祭2」でした。
年明け早々、まさかの参戦にヒップホップ界がざわつきます。
この大会は“新春3on3”形式のチームバトル。
晋平太は「真ライマーズ」というチーム名で、ミメイ、がーどまんという個性派メンバーとともに出場しました。
お正月ムードの中とはいえ、そのステージは完全に“戦場”。
彼の復帰戦にふさわしい、熱気と緊張感が漂っていました。
呂布カルマとの激突──伝説級の準決勝
準決勝の相手は、東海の雄・呂布カルマ。
独自の哲学と存在感を放つベテランとの対戦に、会場の期待は最高潮に達しました。
バトルが始まると、晋平太はブランクをまったく感じさせない圧巻の韻踏みを連発。
細やかな言葉選びと、観客の心を一瞬でつかむ間の取り方――
まるで“進化した晋平太”を見ているかのような完成度でした。
結果は見事勝利。
彼の口から放たれる一言一言に、観客は歓声とどよめきをあげ、
「本物の復帰だ」と誰もが確信する瞬間となりました。
決勝戦──文化がぶつかり合う一騎打ち
決勝で対峙したのは、名古屋のベテランMC・梵頭（ぼんず）。
ストリートを感じさせるリアルなリリックと、現場の空気を操る力が魅力のラッパーです。
一方の晋平太は、技巧と哲学を武器に挑むスタイル。
タイプのまったく異なる二人のバトルは、「スタイルの衝突」というより「文化の対話」と呼ぶにふさわしいものでした。
結果は惜しくも準優勝。
しかし、SNS上では「晋平太 復活」の声が溢れ、その存在感は優勝以上のインパクトを残しました。
2020年、再ブレイクの年へ
「戦極東海獏丸祭2」を皮切りに、晋平太は次々と大会に参戦。
「KING OF KINGS 2020」や「戦極MC BATTLE 第21章」、さらに「UMB東京予選」など、
各地のステージで数々の名勝負を生み出しました。
その姿勢は、単なる“復帰”ではなく“挑戦の継続”。
彼はバトルMCとして戦うだけでなく、解説や司会、イベントプロデュースにも携わり、
シーン全体を支える立場へと進化していきました。
ファンや後輩MCたちからは、「バトルMCを超えた、ヒップホップの伝道師」と称されるほど。
かつてのカリスマは、今度は“教える立場”として新しい光を放ち始めたのです。
試練と深化──体調不良を乗り越えて
2023年頃には体調不良のため、一時的に活動を控える時期もありました。
しかし、それは決して情熱が途切れたわけではありません。
むしろ短い“引退期間”と“休養期間”が、彼の中に深い言葉の重みと表現の奥行きをもたらしました。
再びマイクを握るたび、観客は感じるのです。
――この人は、ただのラッパーではない。人生そのものをリリックに刻む“表現者”だと。
晋平太の物語は、止まることなく進化を続けています。
その歩みは、まさに“ヒップホップと共に生きる男”の証と言えるでしょう。
まとめ
晋平太の引退理由は、燃え尽きや若手への想い、そして“教える側”への転身でした。
しかし外からシーンを見つめるうちに、再びラップへの情熱が蘇り、ファンの後押しもあってカムバック。
2020年の「戦極東海獏丸祭2」で完全復活を果たします。以降、再び大会に参戦し、シーンを牽引する存在に。
彼の復帰は「終わり」ではなく、新しいステージへの“再出発”。
まさに、ヒップホップと共に進化し続ける表現者の姿を示した出来事でした。
